今から数千年前〜1万年前ほどのこと。この日本列島には多数の縄文人が生活していました。現代人は彼らのことを「縄文人」と勝手に呼称していますが、それ以外に呼びようがないので便宜上そのように呼んでいます。ちょっと不思議です。
縄文時代のことを調べようと思っても、土器や土偶などの焼き物以外には確たる物証がなく、また文字も発見されていません。遺跡の分布からすると、巨大な王国規模の権力機構があったのではないかとも言われますが、これも証拠が全くありません。
かつて美術家の岡本太郎が惚れ込んだのは、火焔式土器や遮光器土偶のような見事な意匠でした。それは卓越した美であり、現代風に言えば芸術の領域です。その製作技術は場合によっては異様なほど。おそらくとんでもない専門家集団が存在していたのでしょう。意外に現代と大して変わりのない社会があったようにも思えてくるので、ますます不思議です。
さて、ほぼほぼ残っていないと思われる当時の衣服や布ですが、わずかながら残存例があります。編布(あんぎん)と言われますが、いわゆる編み物です。
鳥浜貝塚で出土した縄文前期の編布
この編布は全国を見てもほんの数点しか残っていません。が、実に幸運なことに、土器に付着した編布の痕(圧痕)が多数残っているのです! これを物証として、編布の製作技法を長年にわたって研究されたのが、尾関清子さんです。
東京は6/16、名古屋は6/30
尾関清子さんはほぼ在野で研究をされてきたので今頃になって博士号を取得されたのですが、その業績は測り知れないものです。従来の考古学は圧倒的な男性目線のそれであり、編み物に着目されることはほぼなかったといいます。縄文人と同じように手を動かして、同じように編間違いをしてみる、そのような方法論は男性には思いつきようがなかったのかもしれません。
尾関さんは若い頃は人形づくりの先生だったそうですが、やがて手芸の先生になり、文化史の研究に目覚め、50代から縄文編布の研究に没頭するという、異色の経歴の持ち主です。このたび88歳にして学位を取ったことに合わせて、東京と名古屋で講演会とワークショップを開催します。
『縄文の布 日本列島布文化の起源と特質』は現在品切れですが、増補版が刊行予定とのこと。
東京は6/16(土)10時半〜、学園坂スタジオです。名古屋は6/30(土)13時〜、刈谷市総合文化センター401研修室で行います。両日とも、講演会の他、編布づくりワークショップも開催します(コースターをつくる予定です)。そのため人数に限りがありますので、お早めにご予約ください。
学園坂スタジオは、ジャンルを問わず、新鮮な視点を擁した研究・表現活動にフォーカスしています。通年で、女性の作曲家ガイド、詩のワークショップなどの人文科学系講座や、手芸教室、音楽やダンスなどの教室を開講、またイベントとして上映会やコンサートなども企画しています。ご関心をお持ち頂ければ幸いです!
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